株式会社コウェル

取締役CTO 田村和雅氏
執行役員 齋藤巧氏

バングラデシュ事業の中核にB-JET人材を コウェルが描く“第二のオフショア”戦略

 

オフショア開発の黎明期からベトナム拠点を築き、現地に300名超のエンジニア組織を擁するコウェル。同社は近年、“ベトナム+1”の体制構築を目指し、バングラデシュでの事業展開を加速している。その中心的役割を担っているのが、B-JETを通じて採用したエンジニアだ。

今回は、取締役CTO兼 エンジニアリング本部長 兼 コウェルアジア副会長田村和雅氏と、執行役員兼エンジニアリング本部 DX Solutions部部長の齋藤巧氏に、バングラデシュとの接点、採用判断の背景、そして今後の展望を聞いた。

委託側の経験を基盤にした、独自のオフショアモデル

 コウェルは、システム開発・EC構築・第三者検証を主軸に事業を展開する2007年創業のIT企業だ。創業直後からベトナムに拠点を構え、日本企業向けに高品質な開発やテストサービスを提供してきた。


ベトナム・ダナンの開発拠点 

田村氏は、同社が品質にこだわる原点には“委託側としての実体験”があると語る。

田村和雅(以下、田村):私たちはもともと、ベトナムのオフショア企業に開発を委託する立場でした。当時受け取った成果物の品質が非常に高かったため、『これを自社でも再現したい』と考えたことが、オフショア事業を始めた原点です。委託側として、どのような成果物が上がってくるのか、コミュニケーションは円滑に進むのか。そうした不安や期待を実感していることは、当社にとって大きなアドバンテージになっています。

コウェルでは品質担保のため、どのオフショアのプロジェクトにも日本側エンジニアが必ず一人はチームに参画する体制を確立している。日本の開発文化や暗黙知を理解した上でプロジェクトを進めることで、高品質なサービスを実現してきた。

こうした“品質へのこだわり”を軸にしつつ、同社は近年、DX・AI領域の拡大を背景に、専門的な概念をいかに分かりやすく伝えるかという点も大切にしている。

齋藤巧(以下、齋藤):ITは専門性が高い領域であるため、お客様への説明が難しくなりがちです。そのため、ITに馴染みのない方にも理解いただけるよう、日頃から伝え方を工夫しています。DXやAIの必要性は感じつつも、“なぜ自社が取り組むべきなのか”や“どこから着手すべきなのか”が分からず、一歩を踏み出せないお客様も少なくありません。だからこそ、丁寧なコミュニケーションが欠かせないと考えています。

地方拠点の検討が、バングラデシュとの接点に

 そんなコウェルがバングラデシュと関わりを持ったのは2018年頃。国内外で新たな開発拠点を模索していたタイミングだった。

田村:当時は国内拠点が東京のみで、まずはニアショア候補として宮崎県や福井県を検討していました。その過程で、宮崎大学がB-JETと連携し、バングラデシュのIT人材を育成していることを知ったんです。ちょうど社内でも、ベトナムに次ぐオフショア拠点の検討を進めており、その候補にバングラデシュが挙がっていました。こうした文脈が重なり、宮崎とバングラデシュの取り組みが自然に結びついたことで、『これは弊社にとって最適な組み合わせだ』と感じたのが始まりでした(※1)。

現在は、B-JET経由で採用した7名のバングラデシュ人エンジニアが活躍している。採用時の印象について、田村氏はこう振り返る。

田村氏は多くの開発プロジェクトを通じて、ベトナムオフショアに10年以上携わる

田村:面接で驚いたのは、日本語学習がわずか3ヶ月ほどでありながら、非常に聞き取りやすい日本語を話していた点です。日本語とベンガル語は文法構造が似ていることもあり、イントネーションも自然でした。スタート時点でこれだけの力があれば、十分に活躍できると確信しました。

採用後は、バングラデシュのエンジニアを社内に迎えるなかで、祈祷スペースを設けるなど、文化・宗教的配慮を行いながら体制を整えていった。

バングラデシュで事業展開の要となる人材を、B-JETメンバーが担う

 B-JETで採用したメンバーが日本で経験を積み、着実に力を伸ばしていく中で、コウェルは次第に “バングラデシュで事業を展開するうえでの中核人材になり得る” という手応えを強めていった。

同社がバングラデシュを高く評価する理由の一つは、コスト面での優位性だ。近年、他のアジア新興国では人件費が高騰するなか、バングラデシュは相対的に低水準を保っている。もちろん、魅力はコストだけではない。英語力やIT技術の高さ、そしてエンジニアとしての成長ポテンシャルにも大きな可能性を感じているという。

ベトナム拠点のオフショア開発チームの立ち上げと組織運営を担い、日越一体となった開発体制の構築と品質向上に尽力する齋藤氏

齋藤:今では社内のバングラデシュメンバーが中心となり、日本の品質基準やスピード感を十分に理解したうえで、バングラデシュ側でのオフショアプロジェクトを推進できるようになってきました。彼らを中心に、一つの事業ラインとして成立しつつあることは、大きな前進だと感じています。

一方でコウェルは、バングラデシュでの開発に可能性を見出しながらも、すぐに現地拠点を立ち上げる判断はしなかった。背景には、同社がオフショア成功の必須要素と位置づける “ブリッジ役の育成” がある。

田村:オフショア開発は、エンジニアを採用して拠点をつくれば成立するわけではありません。日本側とのコミュニケーションを橋渡しし、品質と進行を安定させる“ブリッジ”の存在が不可欠です。バングラデシュでは、その役割をB-JETメンバーに担ってもらうと決めていました。だからこそ、彼らが日本の開発文化やプロジェクト運営を理解し、自信を持ってリーダーシップを発揮できるところまで育成することを最優先にしてきました。

田村氏は、期待を込めてこう続ける。

田村:拠点づくりを急ぐより、まずは中核となる人材を丁寧に育てるほうが、長期的には成功確率が高いと考えています。実際、B-JET経由のメンバーの一人は、当社で初めて外国籍社員としてマネージャーに昇格し、大きな成果を挙げています。彼らの成長が見えた今だからこそ、バングラデシュでの本格展開に踏み出せるフェーズに入ったと感じています。今後は現地にオフショア拠点を設けることも視野に、事業を拡大していく予定です。もしバングラデシュやB-JETでの採用を迷われている企業があれば、まずは一度学生に会って面接をしてみると、彼らのポテンシャルを感じていただけるはずです。

続いて齋藤氏も、取り組みに対する確信を語る。

齋藤:B-JETを通じたバングラデシュでの採用と、現地での事業構築という挑戦は、私たちにとって大きな価値がありました。後悔は全くありません。一歩踏み出すと、必ず新しい可能性が見えてくると思います。

コウェルは「Behind your success」をスローガンに掲げ、顧客やパートナーのビジネス最適化を支える、信頼性の高いITサービスプロバイダーを目指している

コウェルでは、B-JETで育ったメンバーが日本で力を発揮しながら役割を広げることで、バングラデシュ拠点の未来図が少しずつ輪郭を帯びてきている。ブリッジ人材を大切にする同社のオフショアモデルは、IT需要が高まり続けるなかで、これからも確実に進化していくだろう。

■株式会社コウェル
設立:2007年
所在地:東京都品川区東品川2-5-5 HarborOneビル6F
社員数:単体50名、グループ連結400名

■お問い合わせ
株式会社コウェル
https://www.co-well.jp/contact-list

B-JET(プロジェクトや採用に関するお問い合わせ):hr@bjet.org

※1 B-JETは2017年にJICA事業としてスタートし、2020年からは宮崎大学とバングラデシュのノースサウス大学(NSU)がプロジェクトを継承。2025年からは新興出版社啓林館が運営を担う。

TOP
TOP